小学校の4年生くらいの頃、ハンダ付けというものに興味を持った僕は親のつてで隣家に下宿していた森場さんというお兄さんの部屋に上がって実演してもらった。何も知らないガキの持ち込んだ「単一電池にリード線を直接付ける」という今にして思えば難しいお願いで苦労しながらやって見せてくれた森場青年に感謝。どこで売っているのという質問に「荒物屋」と言う回答が時代であった。そのガキは三宮のニノミヤ無線で安い半田ゴテを買ってラジオを作ったりするようになっていった。中高と電気工作は趣味で続けていたが何せ金が無くて半田ゴテはニクロムヒーターの安物を使い続けていた。働き出してからは使う頻度もぐっと減ったが独身サラリーマンの余裕で学生時代の憧れのHAKKOの936を買って温度設定も出来ると便利に使っていた。936はドイツ転居の際も持って来てステップアップトランスを噛ませて使っていたのだが、歳取ってボケて来て電源を落とし忘れて席を外してしまったり、手先が震えだしてもっと短いコテの新しい機種が欲しくなって、ついにせっかくドイツに居るのだから、とドイツ製のERSA i-CON1 の新品放出品を見つけてポチッとしてしまった。なんでも世界で初めて電気式半田ゴテを開発した会社とのこと。日本に居るとWELLERとかよく聞いていてErsaなんて知らなかったがこっちの方が格好良い、と思う。

こちらがErsa社のプロ用ステーション半田ゴテシステム、i-CON 1 である。アマチュア用にはもっと小さなPicoとかNanoというステーションがあるのだがこちらの格好良さに参ってしまい即落ちした。本体手前右下のオレンジの電源スイッチを入れると10秒も掛からず立ち上がる。温度設定は右のロータリーの部でリアルタイムに変えられるしメモリーに設定も出来る。コテにモーションセンサーが内蔵されておりちょっと使わないと170度ほどに下がってコテ先を保護するがコテを持ち上げると2秒ほどで設定温度に戻ってくれるので全く煩わしさを感じない。更に数分間動かさないと勝手に電源が落ちてくれるのでボケ爺には安全この上ない。実は買って一月の間に既に「散歩から帰ってきたら i-CON1 の電源切り忘れていたのに気付きました」というヒヤリハット案件が発生しており、効果を発揮してくれている。

コテはビックリするほど小さく軽く、ケーブルがまた細くて取り周りのしやすさと言ったら! 持ち手からコテ先も近く扱い安い。本体80Wとかヒーター出力150Wとか表示が色々あってよく分からないのだが大きめのコテ先を付けるととんでもなくパワーがあって馬鹿でかいターミナルにぶっといケーブルを付けてもサラサラ半田が流れる。コテ先は黒い樹脂ナットを緩めると簡単に交換できて金属部に触れなければ少々熱くても問題無い。

右が樹脂のHAKKO、左がなんとゴム製のErsaのコテスタンド。クリーナーは金属タワシみたいな奴で、実はこれは非常に具合が良いことに気付いた。黒い部分は柔らかいゴムだが白いところは耐熱性のあるセラミックか何かでコテを当てても心配無い。後ろの穴にはピンを立てたりしてスペアのコテ先を置いておける。

と言う事で半田ゴテに文句の付けようのない最高級品を買ってしまったので、あとは自分の腕だけとなるのだが……。高校生の頃は部活で毎日のようにハンダ付けしていたのだが最近は滅多に触っていなかったせいか酷いものでゴテゴテと盛ったり安物蛇の目基板のパターンを剥がしてしまったり、勉強中である。

コメント